『いきなりはじめるPHP ワクワク・ドキドキの入門教室』の感想

良い本でした。

『いきなりはじめるPHP ワクワク・ドキドキの入門教室』(谷藤賢一)は、アンケートシステムの作成を通じてPHPの基礎を学ぶ本です。

プログラミングの本というのは、通常、基礎から構文を体系的に教えていくものがほとんどです。
PHPの場合だと、書き方の基礎・変数・配列・演算子・制御構文・関数・データベースなどと項目を立てて教えていくのが普通です。

これに対してこの本はアンケートシステムの作成をテーマににしており、アンケートシステム作成において必要になったときに必要な構文を教える、というスタイルをとっています。

一般的なPHP本のように構文ごとの項目立てがされていない点に特徴があります。

良い点

この本の最も良い点は、初心者が(曲がりなりにも)1つのシステムを作るというところにあります

通常のプログラミング本では、構文ごとに項目を立てて解説を加えていくのが普通です。
そのためこの方式では確かに個々の構文・文法には詳しくなります。

しかしその反面、この方法では具体的なシステムを作りづらいという問題があります。
仮に個々の構文を理解できたとしても、それがシステムの中でどのように働くのか? を理解していないとシステムを作ることはできません。

理解力のある人なら学んだことから1つのシステムを作り上げることもできるのでしょうが、初学者でそれができる人は多くはないでしょう。

もちろん通常のプログラミング本であっても、ある程度のシステムの作り方を書いてあるものもあるのですが、それが「分かりやすいか?」教育的配慮が施されているか?」 というとちょっと疑問です。

この本の良い点を列挙してみる

それでは具体的にこの本の良い点を列挙してみましょう。

1つのシステムを作ること

既に述べたように、1つのシステムを最初から最後まで作成できる点がこの本の最も良い点です。

それとこの本では、必要性が出てきた時点でPHPの構文を解説するというスタイルをとっていますが、これが意外と重要です。

なぜなら通常のプログラミング本だと「何のためにこの構文を覚えるの?」「この構文はどこで使うの?」と思うことがよくありますが、この本ではそういったことにはならないからです。

読者が目的意識をもって勉強できるのが良いところです。

PHPの基礎や重要点に触れていること

この本ではアンケートシステムを作るのですが、きちんとPHPの基礎や重要点に触れています。
(もっとも触れているといっても、詳しく解説されているわけではありません。)

とりわけ私が評価しているのは第2章のパソコン設定(環境設定)のところと第4章のデータベースのところです。

パソコン設定は初心者には特に大変です。
かくいう私もパソコン設定には苦労しており、ここを丁寧に書いてくれるのは助かります。

またデータベースとの連携ができるようになると、制作できる物が増え、実力向上に役立ちます。

初心者向けの本であること

初心者向けの本であることも評価する点です。

1つのシステムを制作するような本は、ともすれば難しくなりがちです。
中級以上の読者であるならばある程度難しくてもかまいませんが、初心者に分かりやすく説明するのは大変です。

具体的な題材をもとに、プログラミング学習の入り口を魅力的にしている点が評価できます。

あまり良くない点

反対に良くない点も触れてみます。

解説が短い・到達点が高くない

この本はアンケートシステムを作ることがテーマなので、個々の構文の解説は詳しくはありません。
確かに分かりやすい解説ではありますが、説明があっさりしすぎていて、この本1冊では読者が抱くいろいろな疑問を解消できないでしょう。

それとこの本は1つのシステムを作る本ではありますが、この本で完成するシステムのレベルは高いものとは言えません。

そのためPHPの勉強を進めるのであれば、この本だけはなく別の本を読むなどして知識を深めていく必要があります。

バージョンの違いによる苦労があるかも?

この本の初版は2011年であり、出版年が古くなっています。

現在に至るまでにXAMPPがどんどん新しくなっており、新しいバージョンのXAMPPで本書を使うと、もしかしたらバージョンの違いから苦労するかもしれないです。

私もこの本を読了するまでに何度もつまずきました。
しかも新しいXAMPPを使っていたため、つまずいた原因が私の入力ミスか、それともXAMPPのバージョンの違いにあるのか分からなくて苦労しました(もちろん私の入力ミスなのでしょうが)。

私の場合、たとえばこの本の123頁にはデータベースに接続する5行のプログラムが書かれているのですが、この通りにコードを入力したつもりなのに、一向にデータベースに接続できませんでした(これはバージョンが違うせいなんでしょうか?)。

それで同じく谷藤さんが書かれている『気づけばプロ並み PHP 改訂版 ゼロから作れる人になる!』77頁に書いてあるコードを入力してデータベースに接続しました。

そのためどうしても先に進めない場合は、最終手段としてこの本に記載されたバージョンのXAMPPを使ったほうがうまくいくかもしれないです。

総合評価

評価は星5つ(満点)です。

★★★★★

この本の良くない点も触れましたが、個々の構文の解説が薄いのはこの本の性質上、仕方のないことです。
この本はとにかく1つのシステムを最後まで作りきることに重点を置いており、そのため個々の解説を厚くするとページ数が多くなることを危惧したのでしょう。

またXAMPPなどの環境設定は大変ですが、環境設定に苦労する点はどのプログラミング本も同じです。
むしろこの本は、他のプログラミングの本と比べてもより丁寧に環境設定を書いています。

そのためこの本の良くない点というのは、実はやむを得ないものであると私は判断しています。

それよりも初心者向けの本でありながら、1つのシステムを作りきる点は評価されるべきであり星5つとしています。

私の好きな推理・脱出ゲーム系アプリ

私の好きなスマホゲーム

ときどきスマホでゲームをしています。
私の好きなスマホゲームを一覧にしてみました。

好きなスマホゲーム

デベロッパ ゲームタイトル ジャンル
Child-Dream 人形の傷跡 アドベンチャー
Child-Dream 緋染めの雪 アドベンチャー
Cybergate technology Ltd. R ファミリー
Jin Yue 赤い女 パズル
Jin Yue 最恐脱出ゲーム:呪巣 -起ノ章- アドベンチャー
Nanako Yaguchi ボールゲーム-BLACK HOLEパズル パズル
PONS にゃんこ大戦争 ストラテジー
Sakabou Inc. デラクエスト – ドット絵レトロRPG ロールプレイング
SEEC Inc. アリスの精神裁判 アドベンチャー
SEEC Inc. 四ツ目神 パズル
SYUPRO-DX Inc. 彼女は最後にそう言った アドベンチャー
SYUPRO-DX Inc. 奴は四天王の中で最も金持ち ロールプレイング
Visualshower Corp. ホワイトアイランド アドベンチャー
zzyzx 恐怖!廃病院からの脱出:無影灯 アドベンチャー

こうやってみるとジャンルとしてはアドベンチャーゲームが多いですね。
ただ、私としてはこれらのゲームを推理・脱出パズル系のゲームととらえているんですけどね。

好きなゲームの基準

次になぜこれらのゲームが好きなのか、私なりに好きなゲームの基準を分析してみました。
私がゲームを選ぶときの基準は4つあります。

基準1・パズルゲームであること

先ほども書いたように、好きなゲームは第1にパズルゲームであることです。
ただし、純粋なパズルゲームはだんだん飽きてくるので、どちらかというとストーリー性のあるパズルのほうが好きです。

一覧に掲げたゲームもストーリー性のあるものが多いですね。

純粋なパズルゲームのなかでお勧めするとすれば、Nanako Yaguchiさんの『ボールゲーム-BLACK HOLEパズル』とCybergate technology Ltd.さんの『R』が良いです。

基準2・論理が単調でないこと、論理が破たんしていないこと

パズルゲームが好きなので、当然論理的なゲームが好きです。

もっとも厳密な論理でなくても、作者なりの論理を感じることができればOKです。
ストーリー性のあるゲームも、「ストーリー」という枠の中で論理が一貫しているのであれば、私的には十分論理ゲームたりうるのです。

反対に論理が単調なものや、論理が破たんしているゲームは好きではないです。

論理が単調とは?

論理が単調というのは、たとえばタップしてアイテムを集めるだけとか、あるいは時間さえかければクリアできるゲームです。

一部のゲームにみられるように、ボスを倒したら次のより強いボスが登場するというように、次々と強いボスが登場するだけのゲームは、やること(攻略方法)が同じなのであれば論理が単調といえるのでつまらないです。

論理が破たんとは?

論理が破たんしているゲームというのは、単純ななぞなぞや犯人当てゲームの類です。
これらのゲームの多くは、作者が提示した解答の他にも、いろいろな解答・解釈が成り立つので好きになれないです。

基準3・簡単にサクッとできるゲームであること

ゲームは好きなのですが、そこまでゲームをやりこむつもりはありません。
そのため設定が複雑なゲームや、クリアに時間がかかるゲーム、あるいは課金しないと進めないゲームはやりません。

この観点からロールプレイングゲームはあまりやらないのですが、Sakabou Inc.さんの『デラクエスト – ドット絵レトロRPG』やSYUPRO-DX Inc.さんの『奴は四天王の中で最も金持ち』は手軽にできるので好きです。

基準4・やりたいときにいつでもできること

無料ゲームの一部には、(課金しない限り)1日にできるゲーム時間やゲーム展開が制限されているものがあります。

無料ゲームは広告で収益を上げているので、1日にできるゲーム時間・展開を制限することで、長期間にわたってユーザーに広告を見せる戦略ですね。

その意図はよくわかりますし、私も無料で遊ばせてもらっている以上、その点はあまり強く非難できません。
けれど好みではないです。

私はやりたいときにやれるゲームが好きなのです。

たとえばVisualshower Corp.さんの『ホワイトアイランド』は1つの章から次の章へ行く間は長期間待たされるのですが、ゲーム自体はやり込めるので好きです。

おすすめのゲームTOP3

以上をふまえて、私の好きなゲームTOP3を挙げてみます。

第3位 Child-Dream 『人形の傷跡』

このゲームはスマホアプリで遊び始めた初期に出会いました。
無料ゲームなのにレベルの高さに驚かされました。

Child-Dreamさんは本作に限らず、どれもシナリオが良くできています。

第2位 SEEC Inc. 『アリスの精神裁判』

SEEC Inc.さんの長編作品です。
SEEC Inc.さんの作品では、本作と次作の『四ツ目神』が最高傑作だと思います。

初期の短編作品も面白かったのですが、いまはほとんど遊べなくなったのが残念です。

第1位 SYUPRO-DX Inc.『彼女は最後にそう言った』

やはりどれか1つを挙げるとするとこれでしょう。

彼女の死の真相を探るゲームなのですが、ストーリーのすばらしさはもちろん、ドット絵で表現されたキャラクターからは喜怒哀楽が感じられ、愛くるしいです。美しい音楽が物語によく合っています。

また本編にからめたミニゲームや村人との会話にまで労力が注がれており、作者がこのゲームを楽しんで作った様子が伝わってきます。


以上、私の好きな推理・脱出ゲーム系アプリでした。
ここに挙げたゲームは、推理・脱出ゲームが好きなかたであればどれも楽しめると思います。興味のある方はぜひやってみてください。

『CSSグリッドで作る HTML5&CSS3レッスンブック』と『HTML5&CSS3ステップアップブック』の感想

今回読んだのは『CSSグリッドで作る HTML5&CSS3レッスンブック』『HTML5&CSS3ステップアップブック』(共にエビスコム著・ソシム)の2冊です。

エビスコムさんの本は何作も読んでいますが、エビスコムさんの本は、著者独自の考えを押し付けるわけではなく、総じて一般的な手法・普遍的な手法でホームページを作成しており、初心者でも安心して読めるところが良いですね。

実際にホームページを作りながらの演習なので、具体的なホームページの制作方法が分かります。
また重要な点は紙面を割き、かなりきちんした形で説明してくれるので助かります。

以前からフレキシブルボックスレイアウト(つまりdisplayの値をflexに設定する手法)に興味があったので『HTML5&CSS3ステップアップブック』を買おうかどうか迷っていたのですが、2018年末に『CSSグリッドで作る HTML5&CSS3レッスンブック』が出版されることを知り、この際なので2冊とも読むことにしました。

『CSSグリッドで作る HTML5&CSS3レッスンブック』の特徴

CSSグリッド初心者向けの本です。
この本の特徴は2つあります。

  • CSSグリッドを使うことと
  • モバイルファーストであること

です。

CSSグリッドについて

CSSグリッドというのはホームページを格子状に分割し、格子にパーツを当てはめてホームページを作っていく手法のことです。

最初に格子にパーツを当てはめる作業をするため、はじめからホームページ全体の構成を考えておく必要があります。
それとCSSグリッドを使うことで、レスポンシブホームページが作りやすくなっています。

モバイルファーストについて

以前はパソコンサイトを作ってからスマホ(携帯)サイトを作るのが主流でしたが、現在はモバイルファースト、つまりスマホサイトを作ってからパソコンサイトを作る方向になりつつあります。

この本ではモバイルファーストでホームページを制作しており、モバイルファーストの手法を知りたいという方には参考になります。

『HTML5&CSS3ステップアップブック』の特徴

既にCSSグリッドの基礎は知っているという人は、最初からステップアップブックに取り組まれてもいいと思います。

ステップアップブックはレッスンブックと比べ、より多くのプロパティが登場し、細かなデザインが作れるようになります。
flexについての説明もこの本に書かれています。

レッスンブックは基礎が学べるいい本なのですが、実際に仕事でホームページを作るとなると、ステップアップブックレベルの知識が必要になるでしょう。

総合評価

各本とも、評価は星4つとします。

★★★★☆

別に星5つでもよかったのですが、私自身が他にCSSグリッドの本を読んだことがないので、最高評価をつけるのにためらいがありました。
著者には申し訳ないのですが、M-1などのコンテストで最初の演者の点数が低く抑えられてしまうのと同じ理屈ですね。

『WordPressのツボとコツがゼッタイにわかる本』の感想

最初の評価は最低だった

評価の難しい本ですね。Amazonのレビューを見ても賛否が分かれています。

私がWordPressの勉強を始めたとき、最初に読んだのはエビスコムさんの『WordPressレッスンブック』『WordPressデザインブック』(共にソシム発行)でした。

そして次に読んだのがこの『WordPressのツボとコツがゼッタイにわかる本』(中田亨・秀和システム)だったのです。

なぜこの本を読もうと思ったのかというと、著者の前作『ホームページ作成のツボとコツがゼッタイにわかる本』(中田亨・秀和システム)が大変素晴らしいものだったからです。

そこで中田さんのWordPress本に期待し、読み進めて行ったのですが、読み進むにつれて「なんか思っていたのと違う」という戸惑いがありました。
「エビスコムの著作と全く構成が違うんだけど、なんで?」という思いがよぎりました。

我慢しながら読んでいたのですが、第4章に入ったあたりでとうとう本を投げ捨てたのでした。

何とかがんばって第4章まで読んでみたものの、実際に理解できたのは第1章「WordPressでホームページを作るメリット」だけでした。第2章以降は何を言っているのかさっぱり理解できなかったのです。

実はこの本の特徴としては、WordPressの仕組みの説明に紙面を割いている点が挙げられます。第2章の部分ですね。
しかしWordPressの初心者本を読んだだけの人間がいきなり第2章を読みこなすのはなかなか難しいです。不可能とまでは言いませんが、結構大変でしょうね。

第3章についても同じです。
第3章は「ホームページをWordPressに乗せ換える準備をしよう」とのことですが、何のためにその準備が必要なのかが理解できません。

のちに分かったのですが、結局のところ、第2章・第3章を理解するためには最低限「WordPressのテンプレート階層」を理解している必要があったのです。

つまり

「WordPressを使うためには基本のテンプレート(index.php)を作成する必要がある。基本テンプレートだけでもWordPressは使えるけれど、特別のテンプレートを作った場合は特別テンプレートが優先的に使用される」

というWordPressの仕組みそのものの理解が必要だったのです。
その知識がないと2章・3章は読みこなせないでしょう。

本書は第3章までが理論の説明となり、第4章以降でホームページにWordPressを組み込む具体的な手順の説明にはいります。

けれど私はここで力尽きました。
第2章・第3章で苦しめられた者が4章以降を乗り切るのは容易なことではなかったのです。

この本を見限らなかった理由

しかしそのような状態でありながらも、私はこの本を見限りませんでした。この本が悪いのではなくて、私の理解力が不足していると考えていました。

なぜそう考えたかというと、著者の前作『ホームページ作成のツボとコツがゼッタイにわかる本』が大変素晴らしいものだったからです。

前作の、「全体を見渡したうえでホームページを作成していくという手法。共通部分を先に作り、その後、個別ページを作成していくという手法」が丁寧に説明されていたのが素晴らしかったのです。

この手法はホームページを制作する人であれば当然に行うものです。
けれど初心者向けの本でそれを意識的に伝えているものは意外と少ない気がします。

そのような著者の、しかも同じ『ツボとコツ』シリーズなので絶対に前作と同程度のレベルのはずだし、読者のことを考えた構成のはずだと思っていました(のちのち気づくのですが、レベルについては前作と同程度とは言えないと思います)。

とはいえ、全く理解できていない私がいつまでもこの本にしがみついても仕方がありません。
そこで残念ではありますが、一旦この本を離れ別の本で勉強することにしたのです。

この本の意図するところ

その後、何冊かのWordPressの本を読み、ようやくWordPressがテンプレート階層になっているらしいということを学びます。
それ以外にも、WordPressに関する知識も増えました。

そういった状態でこの本を再読したとき、ようやくこの本がそれほど悪い本ではないな、ということに気づきます。

前作と同様、全体を考えたうえで構成していることが分かります。ひとりで一から作成出来ることを目的としていることが分かります。

特に私がこの本で一番評価しているところは、第3章の最初の2ページです。

このページにはWordPress型のホームページを作るときの手順がはっきりと書いてあります。

この本の提示する作成手順は

  1. 最初に静的サイトを完成させる
  2. その後、WordPressを組み込んでいく

ですね。

多くのWordPress本は、この手順を明示していません。
手順自体は本書と同じであっても、はっきりと明示している本は少ないです。あるいは本書とは違う方法で、たとえば静的サイトを作りながら同時にWordPressを組み込んでいく本もありますね。

本書のように作成手順をはっきりと明示してくれることは初心者にとっては安心につながります。
また、本書に書かれている方法が唯一絶対の作成手順ではありませんが、それでもこの手順が最も失敗の少ない、手堅い手順だと言えます。

その他にもこの本では

  • 共通部分からテンプレートを作っていく、とか
  • 簡単なテンプレートから作っていく

などのように、作成手順の指針を示しており、一からWordPress型ホームページが作れるように配慮した記述が見受けられます。

この本の悪いところ

こうして現在ではこの本を高く評価している私ですが、この本にも欠点があります。
気になる点はいくつかありますが、特に問題と感じるのは次の2点です。

問題点1・初心者向けではない!

この本の最大の問題は、「初心者向けではないのに初心者向けの顔をしているところ」です。

私はこの本の感想として、最初に「本書はAmazonレビューの賛否が分かれている」と書きました。

Amazonのレビューを詳しく読むと、この本に高い評価を付けているのはほぼ全員、この本以前に他のWordPress本を読んだことのある人たちばかりであることに気づきます。
反対に、最初にこの本を読んだ人たちは酷評の嵐です。

なぜこうなるのでしょうか?

大雑把な分類であることを承知の上で書くと、WordPressの勉強レベルは2種類あります。

単にWordPressを使ったホームページ制作手順のみを勉強するレベル(手順レベル)と、WordPressそのものの理論構造まで突き詰めるレベル(理論レベル)です。

多くのWordPressの入門書は手順レベルの解説がメインです。

ところが本書は入門書向けの顔をしながら、理論レベルに踏み込んだ記載をしています。というよりも理論を先に提示してから手順レベルの説明に取り組んでいるといったほうがいいでしょう。

既に手順レベルの入門書を読んだ読者であれば、本書が提示する理論と個別具体的な手順を結びつけて考えることができます。

このような層は、具体的手順は分かるのだけれどなぜそうなるかが分からないという疑問を抱えており、その疑問が本書で解決するため、本書に納得するわけです。

ところが全くの初心者の場合、本書が提示する理論と具体的手順を結びつけて考えることができません。
具体的な事柄を何も知らない状態なのに、理論だけを延々と説明されるため、議論についていけなくなるのです。

Amazonのレビューの評価が分かれる理由がここにあります。

もちろん著者としては、全くの初心者であっても理論的にWordPressを使いこなしてほしいという思いから執筆に工夫を凝らされたのだと思います。
しかしながら結果論になりますが、その試みが成功しているとは言い難いですね。

本書は入門者向けシリーズの一環として出版されていますが、本書の内容を見るかぎり「脱初心者向け」「中級者を目指す人向け」の本とするのが適切であったように思います。

問題点2・ファイルはこまめにアップロードして!

本書では第4章以下で具体的な作業に入ります。
ですが作成したファイルをサーバーにアップロードするのは、第5章の最後、すべてのファイルを作成し終えて以降です。

このようなWordPressの組み込み手順は、理想的といえば理想的なのですが、初学者を対象とした本においては採るべき手法とは思えません。

なぜなら初学者はコードの記載をミスしているおそれが強く、最終段階で一気にファイルをアップロードしてもホームページが適切に表示されない可能性が高いからです。

この場合、ミスを修正できるのであれば問題はないと言えるのかもしれませんね。
しかし最終段階でまとめてミスを修正する手法は、修正個所の特定が難しくなるためお勧めできるものではありません。

やはり初学者にはこまめにファイルをアップロードさせ、不具合が発生すればその都度、ミスを修正していく手法を採らせたほうが良かったのではないでしょうか。

それにもかかわらず著者がこのような手法を採らなかった理由を私なりに推測してみます。

ファイルをこまめにアップロードする手法を採らせる場合、必ず最初にindex.phpとstyle.cssをアップロードしなければなりません。そうしないとWordPressが起動しないからです。

ですがそれをすると著者が理想とするWordPressの作成手順が崩れるため、その点を嫌がったのかな? と思ったのですがどうでしょうか。

総合評価

最後に私の評価を書きます。
私がこの本に下した総合評価は、星4つです。

★★★★☆

読者層のズレを根拠に星3つにとどめるか、あるいは著者の意気込みを評価して星4つにするかで迷ったのですが、最終的に星4つとしました。

この本が最初から「脱初心者向け」「中級者を目指す人向け」だと世の中に伝わっていたら、Amazonレビューの低評価は減少したのに、と思うと大変惜しい気持ちになります。